鬼が来た!

2015年8月27日 映画
熱い友情もなければ、美人妻や恋人との別れや美談がある訳でもなく、かといって肉体派のイケメンや、派手な戦車や武器もいっさい出てきませんが、今まで観た戦争映画の中で一番ぐっときたかもしれません。

「鬼が来た!」

時は1945年。第二次世界大戦末期の日本占領下の中国華北が舞台です。
中国製作の映画ですが、よくある絶対的な反日感はなく、だからこそリアルな日本人像とリアルな中国人像が際立っています。
硬派で約束は守るけれども、屈辱的な事をされるのは我慢ならないプライドの高い日本人。そのばしのぎで欲が深く、薄っぺらな分、融通が利くけれど空気が読めない中国人。
なんだか妙に納得してしまうリアルさがあるんです。

映画としてのBGMというものが殆どなく、日本軍が通り過ぎる際に「軍艦マーチ」が流れるのですが、尋常でない軍艦マーチの破壊力に圧倒されてしまいます。
また、軍艦マーチが流れる中、訳もわからずノリノリでリズムに合わせて踊っている中国人の子供も絶妙にリアルなんです。

言葉の壁と心の壁をなかなか超えることができず、極度の緊張感の中、お互いの不器用な対応を見ていて笑うしかないようなコミカルさで引っ張っていってくれます。水餃子が出てきて食べたいなと思うくらい微笑ましく余裕があった前半。
後半はシリアスに惹きつけてラストまで引っ張っていってくれます。
ほぼモノクロ映画なのですが、モノクロを意識させないくらいの吸引力があり、世界にのめりこんでしまいました。

ずるさや汚さ、恐怖に怒りに恥ずかしさや、強い者に媚びる気持ち。綺麗事で済ませてくれない人間的ないやらしい面が浮き彫りになっていて、私の心を大変かきみだしてくれました。

香川照之さんと、監督でいて主演のチアン・ウェンさんの迫真の演技に圧倒。
素晴らしい映画でした。

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