面白かったです!
「わたしが・棄てた・女 」 遠藤周作
ざっくりあらすじ。
エノケンが流行っていた時代のお話。
第二次世界大戦後くらいでしょうか。
性欲が溢れすぎるそこそこの大学生、吉岡務は、女性と寝たいが為にミーハー雑誌の文通欄から手ごろな女の子を選び、会うまでに漕ぎ着けます。
ですが、実際に現れたのは、小柄で小太りのお世辞にもかわいいと言えないどんくさそうで田舎くさい上に学歴もなく工場で働く森田ミツ。
とりあえず性欲を満たすために、吉岡務は子供の頃に小児麻痺にあった経験を餌に森田ミツの同情を惹きます。人の良いミツは、吉岡の助けになればとその後、二人は寝る事になります。ですが、性欲に任せて適当な女と汚らしい場所で寝た事に吉岡は憎悪感を覚えます。
吉岡は過去を消したくて、その後ミツの前から行方をくらましますが、一方で吉岡の事を想い続けるミツ。ミツはその後、その人の良さから転落人生を歩んでいきます。
大学を卒業した吉岡は、同じ会社で働く美人で社長の親戚のお嬢さん三浦マリ子をものにしようと近づいていきます。
ミツの前では、ヒドイ振舞いをしていて平気な吉岡。ですが、三浦マリ子の前では、本来の自分を見せる事ができず、嫌われまいとカッコをつけ続けてしまいます。そのストレスでソープに行きますが、帰りに男の同僚に見つかってしまい揺すられます。ソープにも出入りせず、お金もかけずになんとか性欲を満たす手段として、またミツに近づきますが・・・・。
ライトで明るい冒頭部に、ん?これはユーモア小説の類なんだろうかなぁと思ったくらいでした。前半と後半のギャプが凄いです。
イマイチな女性に言い寄られて、うっとおしく思う吉岡の気持ちもわからないでもないし、大好きな男性を一途に思うミツの気持ちもわかります。そしてまた、三浦マリ子の前でカッコつける吉岡の気持ちも、吉岡といい感じの恋を楽しんでいる三浦マリ子の気持ちもわからなくもないですよね~。
人間の持つ多面性を人物を置き換えて、色々な角度から魅せてくれるような物語でした。
ミツは、吉岡の事を微塵もつまらない男と思っておらず、出会ってから最後まで想いつづけます。それって実は女性とっては最高に幸せなんじゃないのかなぁと思ったり・・・。
ミツとマリ子はどちらが幸せなのかなぁと考えたり。
途中でカトリックのお話が出てきたりと、神とは?情とは?愛とは?想いとは?と考えたくなるような全編を通じて哲学的であり、読んで良かったと思える作品でした。
ラストのミツのスタイリッシュでない一言、笑い泣きしてしまうような、かっこの悪さにぐっときました。
容姿はイマイチでも、愛情と想い続ける事で、吉岡さんのハートにガッツリ爪痕を残したミツに大きな拍手を贈りたいです。笑

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